農林水産大臣賞典 帝王賞

 

この稿を書いている今日の夜は、帝王賞(JpnI大井・ダート2000m)がある。
正式名称は「農林水産大臣賞典 帝王賞」という神々しさ。全国から実力のあるダート馬が集結し、上半期のダート競馬を締めくくるチャンピオン決定戦である。

いよいよこの日が来たかという思いがあるせいか、こうしてここに、文字を打ち込む指が痺れてきた。最近よくこのような現象が起こるので、身体のどこかがおかしいのかもしれないが、私は病院が大嫌いなのでほいほい行くことはなく、無駄な税金を使わずに、世のため社会のため、早めに死ねるであろうと思う。こういう自虐ネタしかない人間を、ジギャンティ(いま作りました)とでも呼んでもらおうかな。

実はこのレース、ほんの数日前までどうにか予定を調整して、大井競馬場に行けないものかと、めちゃめちゃ本気で、そこら辺をのた打ち回りながら考えていた。とにかくものすごく行きたくて、今かかえている仕事にごめんなさいでもして飛んでしまおうかとも思ったが、私にはそんな勇気はなかった。
酒に酔えば、わけのわからないことを言う見知らぬ男にでも、軽く説教をするクソ度胸はあるのにおかしいなぁ…。

帝王賞といえば、私にとってホッコータルマエである。
彼が出現する前はフリオーソであった。どちらの男もひどく好きで、好き過ぎるのか、想いを飛ばすだけで目の前がくらくらしてしまう。彼らは帝王賞を2勝したダート王。現役時代、フリオーソは叶わなかったが、ホッコータルマエはドバイの海外遠征をしてきた。
なんでそんなにこの馬が好きなのかと訊かれたら、なんでだろう~と困ってしまうが、好きになったからというほかない。菊花賞馬のキタサンブラックもそうだけど、私は500kg超級の馬に心を奪われがちなので、ひょっとしてそれなのかも。人間では横山典弘騎手のような小柄な男が好みなのに、まったくもって不思議な話だ。

「ホッコータルマエが好き過ぎて、彼のレースを見ることができない」と言ったのは、競友である。その気持ちがものすごくよくわかった。結果だけを聞き、少し時間を置いてから、粛々と厳かに、彼のレース動画を確認するという。糟糠の妻のようだなぁと感心した。私は生き急ぐタイプなので、たとえそう思っても、リアルタイムに見て絶叫する部類だが、帝王賞に関しては、私を知っているひとなら信じてもらえないくらい貞淑に観戦。ハンカチの角を小さく噛んだりして…。

話が薄暗くなってしまったので変えよう。
出馬表を見やる。総勢12頭。金太郎飴のように、どこを切ってもダート王が出てくる素晴らしいメンツが集まった。
昨年のジャパンダートダービー覇者のノンコノユメ(女の子っぽい馬名ですが牡馬です)が1番人気。続くアスカノロマンは充実期に入って安定、馬場が渋るとコパノリッキーが爆発しそうだ。いずれにしても、海外遠征帰りで、一時体調を崩したホッコータルマエが、帝王賞を連覇するのはものすごく難しいとは思うけれど、そこを何とかひとつ。嗚呼、神さま。

芝馬ならとっくに引退しているような、7~8歳の現役バリバリのダート馬たち。孤高のベテランとか、いぶし銀といった言葉が紙面に踊ることが多く、彼らの活躍は、中年の端くれである私にも、いろんなところが奮い立つ元気の源になっている。
「馬は頑張っているよ」というのは、横山典弘騎手の常套句であるが、若くない方の馬が、あの重たいダートを走っている姿を見るだけで、中年バンザイ!わーわー言いながら、人生の半分を無事に生きてきましたよー!と、自分を褒めたくもなってしまうのだ。軽やかな芝にはない、力のいるダート競馬は、中年世代こそ率先して観戦すべきだと思う。勇気がわきまっせ。

そんなデカくて強い砂の王者の中に、アムールブリエという牝馬が、紅一点の輝きを見せている。ドバイワールドCで2着になったトランセンド、2014年のダービー馬ワンアンドオンリーなどを所有している大馬主・マエコーさんチの愛馬である。

いまの時点で7番人気のようだけど、ひょっとして発走直前になったら、もっと人気するかもしれない。というのは、どうもここ最近の傾向として、エプソムCのルージュバック、宝塚記念のマリアライトなど、牡馬優勢と見られたレースで、伏兵牝馬の活躍が際立っているからだ。

アムールブリエにも、2015年チャンピオンズCで優勝したサンビスタのようなことが起きるかもしれない。サンビスタは、今日出走予定の牡馬たちのほとんどを蹴散らして、あの日華々しく優勝してくれたんだっけ。なんかあるぞこりゃ…。
札幌の空は、初夏らしく青く澄み切っているが、東京・大井競馬場の空はどうなのだろう。雨が降り続いているというが、この雨が、吉と出るか凶と出るか。タルマエは連覇するのか、牝馬はやって来るのか…。うーん!楽しみ過ぎる。
考えているだけで、また指が痺れてきた。やっぱり病院に行こうかな。